たんぼ×森=たんぼフォレストリー
少し前の話、里山活動に参加しており、活動の集大成ということでレポートを提出する機会があった。
その時、ちょうど耕作放棄地を耕し、自然栽培で稲作をできないかと思いつき手当たりしだいに動いていた。
当時していく中で考えたことなどこの機会に記録しておこうと思う。
まだまだできていないことも多いが、活動していく中で確かな手ごたえは感じた。
いまは活動休止しているが(田んぼもおそらく元の放棄地状態に)、またいずれ戻り実践していきたい。
以下、レポート文
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たんぼ×森=たんぼフォレストリー
私がこれから活動していきたいこと、それはたんぼと森をともに育てることである。これをたんぼフォレストリーと名付けた。
アグロフォレストリーの手法に習い、たんぼと森をともに育てていきたいと考えている。たんぼフォレストリーはたんぼでの農業、森での林業、とそれぞれを分け隔てることなくひとつのフィールドという目線で一緒に育てていくことで、たんぼと森が持っている多面的機能を発揮し里山としての風景を守っていくことにも寄与すると考えている。
アグロフォレストリーはこれまで熱帯林地域で主に活用されてきたが、多様な樹種の存在が熱帯林地域ほど樹木の種類はないが、たんぼと組み合わせることにより多様な生態系を育て日本の温暖地域ならではの”たんぼフォレストリー”が可能だと考えている。
アグロフォレストリーとは
アグロフォレストリー(Agroforestry)とはアグリカルチャー(Agriculture:農業)とフォレストリー(Forestry:林業)を掛け合わせた造語であり、混農林業や森林農業などと訳されている。1950年代から南米地域を中心に始まった、森林破壊が背景となって主に熱帯林地域で実施され始めている。
アグロフォレストリーの特徴としては、ある土地に樹木または木本植物(果樹,香木,榔子類を含む)と農作物もしくは家畜をほぼ同時期に植栽したり、放牧したりする。そして樹木などの多年生植物の成長度合いに応じて、農作物栽培し、植物資源を常に保有しつつ土地を有効に利用し、生産するという点がある。
日本において伝統農法として焼畑農法があるが、継続的に植林、火入れ、栽培の循環が生まれているという点でこれもアグロフォレストリーの一例といえる。日本の焼畑農法では、焼畑の後数年間はソバ、ヒエ、ダイコン、カブ、サトイモ、マメなどを育て、さらにコウゾやミツマタなどを植えて換金性の高い植物で10年くらい利用した後、スギの植林を行うというスギの造林法がある。
アグロフォレストリーのメリット・デメリット
◎メリット
・複数の種類の農作物を同時に育てるので、単一作物の栽培価格変化による影響を受けづらい(ある種類が安くなってしまっても、他の作物を売ることで補える)
・森を育てるので、樹木と農作物の相性の良い組み合わせがあり、収量増加やその土地の効率的な活用ができる。
・森を育てることで落葉による栄養の循環が生まれる。
以上のメリットはアグロフォレストリーが実施されている熱帯林地域でのメリットであるが、私が考える一番大きなメリットは人と土地の交流地点になるということである。
私のたんぼフォレストリーの将来像としてはたんぼとして、森としてだけでなく、ビオトープや自然観察、人と人、自然と人との交流が生まれる場として価値が生まれるようにしたいと考えている。(稲作をしながら、時には果樹を取り樹木の下で休憩がてらお茶をするようなイメージ)
◎デメリット
・森を育てるので、収益を得るまで時間がかかる(植える植物にもよる)。
・多くの作物・樹木を育てるので管理が大変(知識と経験が必要)。
・従来の農業とは異なる手法なので、地域住民の理解が必要。
以上のデメリットの中で一番注意しなければならないのは地域住民への理解だと考えている。稲作目線で考えると一般的に行われている慣行農法(単一植物の栽培)では邪魔者扱いされてしまう植物が存在することになるので、周囲に気を配りながら地域住民の理解を得ることが非常に重要となる(田んぼの中に樹木が植わっていようものなら草刈りをサボっている。などと言われかねない)。
現在、アグロフォレストリー で多くの実績がある地域は、熱帯林地域であるが、地域の社会条件、土壌条件や気象条件、現地でのニーズ、何を求めているかによって、植える作物も樹種も、その組み合わせ方もさまざまである。木材やパルプ材を採取するのか、農作物を直射日光から守る庇陰樹とするのか、薪炭材とするのか、あるいは果実を採取するのか・・・目的によって植える樹種も多彩である。また農作物にしても、香辛料、嗜好料、薬草、繊維など選択肢は多岐にわたる。
住んでいる地域に合わせていくことのできる柔軟性、多様性こそが、アグロフォレストリーのおもしろさでもあり難しさと言われている。
アグロフォレストリー の特徴を活かしつつ、必要以上に手入れをしなくとも自然の成り行きにある程度任せ農作物を育てることができないかを考え、落葉による栄養の循環を促すことができるようにすることが、たんぼフォレストリーを継続していくうえでの目標だと考えている。
植える植物について
たんぼに適した樹木として耐水性、水はけの悪い場所での生長を重視する必要がある。
里山や湿地にごく普通に生えている植物のなかでも、食用でき有用となりうる植物を中心に調べたところ、果樹として、カキ・ベリー類の樹木、カキは、「桃栗三年柿八年」などと言われ収穫まで時間を要するが、湿地との適性や病害虫に強いとされている。
また、ベリー類樹木は、収穫までの期間が短く、また湿地に対応している樹種もある。さらにベリー類の近くにハッカを植えることでコンパニオンプランツとし、ベリー類の害虫防除を期待でき、より多様な植物相を形成することも考えられる。
落葉樹としては、ヤナギ・ハンノキ・カツラとし、これらは湿地を好む落葉樹であり、落葉した葉がやがて堆肥となり循環することが期待できる。
毎年 |
2〜3年 |
4年以上 |
イネ |
ベリー類 |
カキ |
クリ |
イチジク |
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エダマメ |
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たんぼフォレストリーまでの道のり
植物界の生長は非常に長い期間を要し、長い目で付き添っていかなければならない。
毎年収穫できる作物としてイネ、サトイモ、エダマメがあり、いずれも現在私が活動している田んぼでもほとんど人の手を加えることなく収穫することが出来た。
年数を重ねるごとに収穫できる作物が増え、ハンノキなどの落葉樹の木々が育つことで風景も生長するたんぼと森にし、その自然の成長を楽しみながら活動できると考える。
さいごに
私の中で、このたんぼフォレストリーの発想が生まれたきっかけとして、地元で農地転用されソーラーパネルの設置が進んでいることがある。昨今のソーラー発電ブームにより、農地だった場所にソーラーパネルが広がり景色が一変してしまう土地が増えてきた。見慣れた風景に現れた違和感、一度建設してしまったら元の農地に戻ることはないだろう。
一時的な世間の流行に流されることなく、たんぼや樹木の生長を見守り、風景を育て、地域の自然と関わり合いながら生きてていきたい。
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